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1.学校建設の要点

1-1 適正技術の概念
発展途上国の環境改善を考える際には、対象国の経済、技術、文化、生活習慣等の要素に十分配慮し、現地の条件に見合った適切な技術を選択することが重要である。


この点を鑑み、当研究室では適正技術の主な構成要件を以下の4つとし、カンボジア国ポイペト地区にはどのような学校が最適なのか検討を重ねた。

(1)Technically viable: 現地で修理できる技術、手に入る材料で作る
(2)Economically feasible: 自分たちで払える安上がりなもの
(3)Culturally accepted: その土地の文化、習慣にあったもの
(4)Environmentally sound: 環境にやさしい

これらの要点について検討した結果、当研究室では版築工法を用いた住民参加による学校建設を提案する。

1-2 版築工法の概要
1)版築工法とは
版築工法とは、土を建築素材として利用した建設方法のことである。土は身近な素材であり、古来より世界中で利用されてきた。当研究室は、この建設方法がカンボジアでの学校建設において以下の点で有用であると考えており、現在もその可能性についての検討を継続している。

2)版築工法の利点
①地域産材の利用
建設を計画しているポイペトでは、ラテライトを含んだ粘土質の赤土が採取できる。
地域で採れる材料を利用することで、材料費の大幅な削減が可能である。また、地場産業の育成によって、外部に依存しない地域内循環型の学校建設の可能性がある。

②簡便な施工方法
土を突き固めるだけという簡便な施工方法から、地域住民にも建設・修繕が可能である。
住民が主体となって建設を行うことで、住民の自治意識の向上、労賃の削減、建設後のメンテナンスなど、援助を待つといった従来の受身の姿勢とは異なった事業展開が期待される。

③住宅建設への技術転用
現在、ポイペトの居住環境は快適とは言えない状況にある。
土には調湿調温などの環境調整機能があり、学校建設によって得た技術を住宅建設に転用することで、居住環境の改善が可能となる。

1-3 住民参加の利点
住民参加の利点として、以下の5点が挙げられる。これらの点に十分留意することで、現地に根付いた学校建設計画のプロトタイプとして本計画案が住民に理解され、建設後は適切に運用される事を期待する。

①住民が技術を習得することで、技術が地域に根づくことに繋がる。
②学校の補修など、その後のメンテナンスを住民の参加によって行うことが可能になる。
③学校建設で得た技術や材料を住宅建設に転用できる。
④職業訓練としての役割を担うことで、住民が仕事を得られやすくなる。
⑤自分たちの手で立てるという行動が、住民の誇りに繋がる。

2.建設計画の方針
2-1 地震に対する方針
カンボジア国で行われた他の学校施設の設計例において地震力は想定されていないため、本計画においても地震力は想定しないものとする。

2-2 構造計画の方針
現在、壁式構造(版築耐力壁)と鉄筋コンクリート・ラーメン構造(版築非耐力壁)の2つの構造設計案を検討している。前者では地域産材の活用とコストの削減を優先し、後者では構造的な強度を優先するのが目的である。今後、依頼者との検討を重ねた上でいずれかの工法を採用したい。

1)壁式構造(版築耐力壁)
最もプリミティブな方法として、土壁を耐力壁として用いる。土の扱い易さと地域の材料・技術を最大限に尊重し、配筋には鉄筋ではなく竹筋を用いる。また、竹はポイペトで入手できるため、コストの削減や住民の自力建設が容易になると考えられる。

2)構造計画
柱、梁を8m×6mのグリッド状に配置した鉄筋コンクリート造・ラーメン構造とする。構造的安定度を優先し、土壁は間仕切り壁としての機能のみを持たせる。既存の小学校建設と工法が類似しているため、従来の技術を応用できるとも考えられる。

2-3 安全性の検討
現在、日本の建築基準法では、版築壁を構造体に用いることはできない。しかし、近年は建設コストや居住性、意匠などの様々な方向から版築の有効性を示す実例が増加しつつある。
日本では、神戸芸術工科大学「版築研究所」の手により、壁式構造と鉄骨ラーメン構造の版築小屋が建設されている。国際援助の分野では、アフガニスタン、チベット、ラオスなどの国において版築工法を用いた施設建設が行われている。もっとも、土は建築材料として長い歴史を持っており、世界各国の住居では古来より身近な工法として版築工法が用いられることが多い。

①神戸芸術工科大学『版築研究所』による実験建設
版築研究所では、版築工法による建物を2棟建設している。第一期は土に石灰と塩化カルシウム水を混ぜただけのプリミティブなものであり、壁式構造を用いて2002年の2月に竣工している。第二期はFC混合剤が用いられており、第一期のものと比べて壁厚を薄くしている。
2005年2月に現地を視察したところ、土壁の表面が多少剥離しているのみで、構造的には全く問題が無いとの報告を受けた。版築研究所の計画においては、基礎と土壁の接合は竹筋を数本挿すのみといった簡素なものであるが、本計画書が計画する中学校では竹筋を組み上げて基礎と強固に接合することで、より安定した構造になると考えている。

②国際援助活動における版築工法の活用事例
国際援助活動の分野では、コストの削減や住民参加を重視したNGOによって、アフガニスタン、チベット、ラオスなどで版築工法による施設建設が行われている。特に、ラオスにおいて日本民際交流センターによって建設された小学校では、プレス機で圧縮加工した「インターロッキングブロック」と呼ばれる版築ブロックを採用しており、耐久性の高い学校建設を実現している。
ただ、本計画では建設コストの削減を大きな目標としており、設備投資による出費を抑える、現地の技術を用いるという点に重点を置いて、一般的な版築工法を採用している。

③世界の住居
土を用いた住宅は、古来より世界中で建設されてきた。アフリカや南米では日干しレンガを用いた住宅が利用されており、現在でも身近な建築材料として用いられている。特に多様な民族が住む中国では、万里の長城をはじめに様々なタイプの施設が版築工法によって建てられている。中には土楼閣と呼ばれる15mの高さを持つ集合住宅も存在し、現在でも多くの人々が住み続けている。

3.ポイペトでの建設実験

3-1 建設実験の概要
平成17年の3月18日から23日まで、ポイペトでの版築壁の建設実験を行った。市場での資材の購入から土の掘削、壁の作成まで全ての工程を現地で行い、建設の現実性を確認した。

3-2. 施工手順
①土の採取
原料はポイペトで一般的に採取可能な赤土である。「壁の体積×2」を目安に採取し、ふるいにかけて石を取り除く。

②セメントの混入
石灰や科学薬品を入れる場合もあるが、本計画ではカンボジアで一般的に流通しているセメントを混入材として用いる。また、セメントの重量は全重量の7%程度を目安とする。

③成型
出来上がった土を60cn程度の高さまで型枠に流し込み、約半分の厚さになるまで叩き締める。適宜型枠を継ぎ足しながらこれを繰り返し、必要な高さまで積み上げる。

3-3 実験の成果
本建設実験の結果から、以下の成果が確認された。現地の気候や土の状況を確認したことで、今後の作業に関する基礎的な情報が入手出来たと考えられる。また、現地のNGOや住民との交流を通じて、版築に対する理解も得られたのではないだろうか。

①木材、工具などの型枠作成に必要な資材は全て現地で購入が可能である。
②住民が建設に協力を申し出ており、版築壁の建設に対する現地住民の意識は高い。
③住民参加での版築ワークショップの開催を計画している。
④厳しい日射と雨季の降水には、基礎を高くする、庇の出を深くするなどの処置を行う。

4.全体の計画

4-1 平面計画
①教室の規模は6m×8mの長方形平面であり、教室を4室、職員室を1室とする。
②便所は校舎近くに配置し、1.5m×2mのものを3室とする。
③廊下の幅を3mと広めに取る。腰壁を配置して校舎とグランドの間の中間領域を充実させ、
子どもが風通しの良い外部空間で活動できる場所を設ける。
④校舎の裏が閉じられることで、ゴミや糞尿などの汚物が溜まる場所になる。裏面にもテラス
を設け、場所性に富んだ多様な空間をつくる。

4-2 断面計画
①屋根
構造体は、既存の学校校舎に広く用いられている鉄骨トラスとする。
②壁
前述の理由により、壁には版築壁を用いる。
③床高
雨季の浸水に留意し、床高は地盤面から400mm程度の高さとする。
④庇
直射日光と雨水の遮蔽のために、建物の外部に面する窓、廊下には庇を設置する。
⑤開口部
1)腰壁式
鉄筋コンクリート・ラーメン構造を採用した場合、土壁は加重から解放される。教室の壁の高さを60cm程度の腰壁とし、光と風を最大限に採り入れる。
2)スリット窓+多孔窓式
壁式構造により土壁を構造体とする場合は、壁の配置間隔によってスリット状の窓を取る。その他、土を固める際に木枠を埋め込み、構造に影響が出ない程度の開口を取る。
⑥建具
土を充填する際に必要箇所に木ブロックを埋め込み、接続金具を打ち付けて建具を固定する。

4-3 施工計画
1)壁式構造の場合
①基礎と壁の接合
雨季の降水による地盤への浸水を考慮し、基礎部分はコンクリートのベタ基礎とする。上記の理由により、 配筋には竹筋を用いることを想定している 。
②壁と屋根の接合
土壁を叩き締める途中に、桁と固定するために加工を施した埋木を埋め込む。埋木と桁とを固定し、桁と屋根組みをボルトで固定する。

2)鉄筋コンクリート・ラーメン構造の場合
①基礎と柱・壁の接合
既存の建設技術と同様に基礎はコンクリートのベタ基礎とし、鉄筋を配筋する。
②柱と屋根の接合
柱にアンカーボルトを埋め込み、屋根材と固定する。

4-4 材料計画
①天井
野地板の表し仕上げとする。
②壁
壁材は現地で採取できる赤土を利用し、仕上げは土の質感を活かすために仕上げ処理は特に行わない。土壁は断熱性能が高く、メンテナンスが容易、かつ何処にでもあるという身近な材料である。なお、防蟻・防水の必要性があると判断される場合は薬剤塗布を行う。
③開口部
鉄格子や窓を設けると教室内が暗くなるため、木枠をはめ込んで開放的な開口部を設ける。
④床
教室内の床には、タイル貼りを想定している。
04/30|アジア都市建築研究 カンボジアコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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近畿大学理工学部建築学科都市計画研究室は、2007年4月より新しく生まれ変わりました。

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これまで培われてきた「地域・生活に根ざし地域とともに考える」という視点を継承しつつ、フィールドをアジアに広げ活動を進めていきます。
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